東北・新潟の新聞社(河北新報社、山形新聞社、福島民報社、新潟日報社)が連携し、地元の魅力を発信するニュースサイト「7TIMES(セブンタイムス)」。今回は、河北新報社と新潟日報社が協力し、世界遺産の国内推薦を目指す「新潟県佐渡島」に焦点を当てた企画をお届けします。
新潟県佐渡島と聞くと、何を思い浮かべますか?
一般的には、佐渡金山やたらい舟、空を舞うトキの姿をイメージする人が多いでしょう。
それだけではありません。佐渡島は、寒ブリや南蛮エビなどの魚介類、ルレクチエやおけさ柿といった果物の生産も盛んです。海に山に、豊富な食材に恵まれ、鬼太鼓などの伝統芸能が息づくまち。日本海を望む美しい景色も見どころです。
今回は、佐渡島の金山の歴史にゆかりある伝統芸能と子どもたちの姿を、3回にわたり連載します。ぜひこの機会に、佐渡島の魅力に触れてみませんか。
誇りを継ぐ – 文弥人形編
人形に命が吹き込まれる島―佐渡。
人形が語り、笑い、泣き、勇ましく薙刀(なぎなた)を振りかざすときもある。古くから受け継がれてきた「説経人形」「のろま人形」「文弥人形」の人形たちは、人情ものや合戦ものを演じ、島民に長く愛されてきた。
説経人形は江戸時代に上方から伝えられたとされる。人形の衣装に手を差し、説経節に合わせて動かす。
のろま人形は説経人形の幕間狂言として広がり、間抜けで正直者の主人公が佐渡弁で笑いを取る。
文弥人形は哀調を帯びた文弥節に合わせ、人形の頭が前後左右に動き、細やかな感情を表現する。
金銀山の繁栄によって全国から人が集まり、人形芝居も盛んになった。近代化とともに島外の都市部では廃れたが、島内では各地のグループが継承してきた。
その一つ、真野地区を拠点に文弥人形を守る真明座の座長川野名孝雄さん(90)は言う。「子どものときは、祭りで人形をやると、ごっつおうが食えたからやった。父親やいろんな使い手を見て教わった。厳しかったが、大人になっても続けてこられたのは、好きだったから」
今では珍しい三つの人形芝居は、国の重要無形民俗文化財にもなった。
授業で文弥人形を取り上げる小中学校もある。真野中学校では20年ほど前から総合学習のテーマの一つとなり、川野名さんらが講師を務める。「佐渡から人形をのうせんようにしてもらわんと、親や先輩たちに申し訳ない」。そう思う川野名さんの指導には熱が入る。
本年度は1~3年の計9人が学んだ。3年の3人はともに「兄がやっているのを見て、自分もやろうと思った」と口をそろえる。
自分でなく、人形に演技をさせること」(飯森信三郎さん)を面白いと感じ、「扱うのが難しいからこそ」(高野満暉さん)、あるいは「昔からあるものを身に付けることができる」(瀧川啓太さん)と思えることで、やりがいも感じた。
そして、人形芝居が残るのどかな地域を自慢するように言った。「ここは、ふるさとらしいふるさと」―。