長引くコロナ禍、街の停滞感を打ち破るかのような鼓動が、仙台の中心部に響いた。
11月26~28日、仙台市青葉区の東北電力グリーンプラザで、佐渡島(新潟県佐渡市)の金山の世界遺産登録を応援するイベントが開かれた。
一環として披露された伝統芸能「鬼太鼓(おんでこ)」。赤鬼と青鬼が、太鼓に合わせて力強く舞い、仙台の街に無病息災と五穀豊穣への祈りをささげた。
仙台市青葉区の複合施設「CROSS B PLUS」を出発し、人が多く行き交うマーブルロードおおまち商店街へ。道行く人が興味深そうに足を止め、視線を向ける。
「なまはげかと思ったら、新潟から来たの」「お祭りのような太鼓が聞こえたので見にきた。鬼の舞に元気をもらった」―。
今回、佐渡島からやってきたのは、鬼太鼓「鼓志の会」。コロナ禍という社会情勢も鑑み、10分ほどの披露だったが、鬼が最後に太鼓を打ち鳴らすと、観衆からは惜しみない拍手が送られた。
そもそも、「鬼太鼓」とは何か。「鬼」と聞くと怖いイメージが先行しがちだが、佐渡島の鬼には角がない。
世界遺産登録応援サイト「SADOプライド」によると、鬼太鼓には地域の家々を回るなどして厄をはらい、 五穀豊穣を祈るなどの役割もある。佐渡島では120ほどの集落で、伝統芸能として受け継がれている。
一方で、鬼の舞い方や太鼓のリズムなど、集落によっていくつもの違いがあり、それぞれの鬼太鼓に地域の誇りが詰まっているという。
佐渡市観光振興課交流イベント推進室長の斎藤博文さんは「仙台の人たちがとても温かく迎えてくれて嬉しかった。世界遺産認定に向けて、仙台の皆さんも一緒に応援してもらえたらありがたい」と話す。
国の文化審議会世界遺産文化遺産部会が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に世界文化遺産登録を求める国内推薦候補について審議を開始した。
過去4度選に漏れ、5度目の挑戦。2021年度の推薦を目指しているのは「佐渡島の金山」のみで、今月中にも結論が出る見通しだ。